- 「黄金の扉」、「賢者の投資術」、「金融2.0」などの大げさなキャッチフレーズとは反対に、本書で展開されいる投資哲学、投資理論、投資法などに関して特に目新しいものは見あたらなかった。REITやETF、アセットアロケーション、オプション取引、ADR,GDR、FX、タックヘブンの利用法など基本的な知識の復習といったところ。
株で150億円を儲けた若者やFX投資で4億円儲けた主婦などを例にし「金融2.0」という革命の結果のように表現しているが、古今東西どの世界にも、投資で大成功する人はいるわけで、単にハイリスクをとった結果、たままた(実力もあるが)儲かったに過ぎないのでは。しいて言えば、確かにインターネットの発展は、取引コストの大幅な逓減と効率的な取引システムを生み出したことは事実で、これを革命と呼べないこともないが。
しかしながら、さすがは橘玲さんの著書だけあって、引き込まれるような文章力には感心した。特に海外投資を専門とされているだけあって、この分野の知識、ストーリーはひきつけられる。
楽しみながら、海外投資を中心とした基本的投資の知識を習得したいと考える方に向いた本だろう。 - 今回の本は、「臆病者のための株入門 」 の続編です。その本が出た2年前の時点では、日本の証券会社から低コストで海外の株式に投資するのはやや困難でした。しかし、金融の世界は確実に、そして思っていたよりも早いスピードで動き、瞬く間に海外ETFがネット証券で売買できるようになりました。
今回の本はその上級者編ということで、デリバティブやエマージング投資の話題も盛り込み、金融の世界を旅しているような不思議な感覚を覚えます。私のようなミドルリスク・ミドルリターンを求める人間が使えそうな知識はあまり書かれていませんが、読み物としては非常に楽しめ、今日1日で読み切ってしまいました。
何よりも、最後の一節が彼の哲学を物語っています。
「自由とはたんなる観念ではなく、個人の経済力から生み出されるのである。」
私も自由に生きたいと思います。 - 著者は,現代ポートフォリオ理論(MPT)に基づく金融資産の投資方法を主に解説している.ETFを初めとする金融商品の動向についての解説は詳しくコスト・税制面についても適切な説明がなされている.また,国際決済システム,海外投資生活情報や一般向け経済解説書のダイジェストなど盛りだくさんの内容で,やや散漫な印象を与えるがお買い得と言えるであろう.
しかしながら,読者は投資をする際に以下の点に考慮した方がよいであろう.
(1) 金融商品の分散投資による純資産(NAV)の増大に重点を置いており,キャッシュフロー(CF)の作り方が手薄である.金融商品は自分でコントロールできないと言う欠点がある.
(2) 「究極の投資」において,価格変動リスクの高い金融商品をレバレッジをかけて投資する方法を紹介している.通常,まともな賢者はレバレッジをかけるときは,自分がコントロールできる資産に対してCFを作ったり契約の条件でヘッジする.
(3) 新築マイホームを購入することを前提として,マイホーム投資を否定しているが,中古物件を上手にマイホームとして購入して儲けている人も結構いる.また,築30年で建物の価値がなくなるとしている.木造の場合減価償却の期間から考えて担保価値は確かにないが,使用価値はある物件もたくさんある.海外に行かなくとも近所を散歩するだけで実感できる.著者は不動産建築業界(新築を建てて大きな粗利を採るビジネスモデル)の宣伝に洗脳されているのかもしれない.
(4) REITの方が流動性があり,いいと思っているようだが,中でレバレッジをかけているし,ファンドマネージャーが優秀とも限らないので,実物資産とは異なる「他人任せリスク」が生じる.実際,アメリカの90年前後のS&L危機において,いくつかのREITは破綻した.著者はこのようなリスクを看過しているようだ.
(5) 4章でMPTを擁護しているが,説得力が著しく乏しい.単純に考えれば,データによる価格変動の確率密度分布と正規分布を比較すればよいはずである.グラフを描いて比較すれば読者はわかりやすいはずで,なぜ描かなかったのか疑問に感じる.明らかにずれている理由を考察したいなら,正規分布を導入する根拠となる中心極限定理の成立条件について言及すべきであろう.初期の研究者は,正規分布を仮定すると計算が楽で,論文が書きやすいという理由で安易に適用したのかもしれない.実データをもとにした分布でまじめに数値積分するのがいいと思う.
(6) と言うことで,「究極の投資」において著者は変動率(リスク)を過小評価している可能性が極めて高い.MPTを信じて殉教したい方は試してもよい.(信仰の自由があるから.)
ないないづくしのサラリーマンに対して,「リスクを取れ」と言うアドバイスは疑問を感じる.まず,自分が持っているものに焦点を当てるように提案し,学習することで成長することを促すべきでしょう.実は「究極の投資」が著者独特のジョークなのかどうか私ははっきり判断できなかった.それにしても,女友達から借り入れを起こすのだけは止めたほうがよい.非常に高くつき,自由を失うからである. - ・あまりの内容の充実さに一気に読んでしまいました。最新の環境を咀嚼し、投資の本質を剔っている類書を私は知りません。
・私は、この本を読むまで、「個人投資家が身につけるべき理論は既にそこそこのマスターしたのではないか」と思っていたのですが単なる思い上がりでした。本書で初めて見聞きしたことは非常に多く、めちゃくちゃ勉強になりました。著者にはいくら感謝してもしたりません。
・弱小個人投資家が、資産を大きく増やす為にどうレバレッジをかけてポジションを張るか、その具体的な究極の手段がココには書かれています。
・よくある普通の投資の教科書のようなものは現実は全く役に立ちませんよね。よくある、資産が現金で300万円くらいあったとして、それを海外と国内、債券や株に分割し、運用しましょう的な。どんなに成功してもせいぜい年率10%程度が関の山くらいのやつ。30万円増えても人生にとって何の役にも立ちません。レバレッジをどうかけるか、ポートフォリオをどう組むかに関して有効なアドバイスが随所にちりばめられています。その過程で、投資信託(=無能なファンドマネージャー)が如何に暴利を貪っているか、プライベートバンカーがどれほど無能な張り子の虎か などなどが同時に理解できます。具体的な記述は他のレビューアーにお任せします。
・私が最も目鱗だったのは”ミセス・ワタナベ”の投資行動とその人生観。
−私の頭の中には常に「なぜ日本はこれほどまでに改革が進まないのか?」という積年の課題があるのですが、著者の切り口はそれに対する新仮説でした。
私は今まで、老人と公務員(政治家・官僚含む)、ゾンビ業界(ex.建設業界)がその元凶だと思っていましたがそこにFxを行う主婦が加わっていると。
−ミセス・ワタナベとは日本の主婦トレーダーの総称らしいのだが、レバレッジを効かせて、数兆円単位で円を売り、米ドルやポンドその他の高金利通貨を買う人達。投資や為替の理論が全く分かっていない為、どのような状況下でも、ポジションの取り方は上記の通り、常に同じで、逆(ドルを売り、円を買う)は行わないとされる。(それはFxを利率の良い外貨貯金だとしか認識できない心理的効果によるものと説明している。)
→彼女たちが望む未来とは 「低金利と円安。その実現手段として、改革が遅々として進まず、巨額の財政赤字がさらに拡大し、社会が不安定になり、株価も不動産も暴落するような社会を望む」のだと。確かに、彼女達のポジションの取り方からするとそう望むのは極めて論理的だと。何もできない福田内閣を見て、「安心して円を売れるわ」とほくそ笑んでいる状況が目に浮かびました。新たな売国奴の出現が衝撃的でした。
(個人的には・・・ 彼女たちにはもう少しクレバーになってもらいたいと切に望みます。2008/3/30時点の単なる個人投資家としての予想は円高ドル安がより一層進むと思っています。米国の景気の腰は完全に折れています。不景気は始まったばかり、1ドル100円で留まるはずがないと予想します。より一層の円高が進んだ場合、日本沈没を望むミセスワタナベはレバレッジに応じて大損=即死します。そしてその煽りを受けるのは何も知らない旦那と子ども、結果としての家庭崩壊です。そうならないことを望みます。売り買い両方でうまく儲けて頂きたいです。) - 橘氏の著作は(小説は私は好きではないが)「毒」、独自の切り口があって楽しめるものが多い。そういう意味では、本書は「毒」は(多少は感じるが)不足ぎみで全般に真面目な内容となっていると感じた。文章が読みやすく、スラスラと読みすめられる。海外投資についての体系だった内容とはなっておらず、「読み物」的、あるいは資産運用についてのヒントを得るための本ととらえればよいだろう。面白く感じたのはタックスヘイブンとヘッジファンドのところ。共感したのはETFやFXについてのところ。私自身ADRも含めて、主としてコストの安さと商品のシンプルさ、個人としてのアクセスのしやすさから注目している商品だったので。
次回作にも期待します。





